私が住宅業界に入ったのは、2004年のことです。
当時、住宅設備メーカーとして業界No.1のシェアを持つ会社に入社し、営業として地域の工務店様と関わるようになりました。
ただ、私がやっていたのは、単に商品を販売する営業だけではありませんでした。
会社から指示されていたというより、地域工務店様と向き合う中で「ここまで踏み込まないと、本当の意味で役に立てない」と感じ、営業活動の延長線上で半ば勝手にやっていたことです。
下請け脱却に向けた相談。
高気密・高断熱住宅の普及に向けた取り組み。
集客の相談。
勉強会資料づくりの手伝い。
感謝祭イベントの企画・実行支援。
メーカー営業の役割からすると、少しはみ出していたかもしれません。
それでも、工務店様が地域で選ばれる会社になるために必要だと思ったことには、できる限り関わってきました。
住宅設備メーカーの営業という立場ではありましたが、私にとって工務店様は「商品を買っていただくお客様」というだけの存在ではありませんでした。
地域で家づくりに向き合い、職人さんや協力業者さんとともに、お客様の暮らしをつくっている人たち。
その工務店様がもっと選ばれるようになるにはどうすればいいか。
下請けではなく、自社の力で受注できる会社になるには何が必要か。
そんなことを考えながら、日々現場に足を運んでいました。
コロナ禍で感じた、どうしようもない違和感
しかし、コロナ禍で状況は大きく変わりました。
営業活動は自粛。
ショールームも閉鎖。
お客様との接点は極端に減り、住宅業界全体が不安の中にありました。
それだけでも苦しい状況だったにもかかわらず、そこへ資材高騰の波が押し寄せました。
メーカーとしては、価格改定を得意先へ伝えなければなりません。
会社が厳しい状況にあったことも理解しています。
企業は慈善事業ではありません。
価格を上げざるを得ない事情があったことも、頭ではわかっていました。
ただ、どうしても心が追いつきませんでした。
当時は事務所へ訪問することも難しく、価格改定の案内を持って、わざわざ現場でアポイントを取ることもありました。
相手からすれば、会話すらできれば避けたい時期です。
未知の感染症への不安があり、現場も会社も混乱している。
そんな中で、わざわざ訪ねてきたメーカーの営業が伝えることは、価格改定のお願いでした。
その時、お客様がどう感じていたのか。
正直、深く考えないようにしていた部分があります。
考えてしまうと、動けなくなりそうだったからです。
一番苦しかった言葉
そんな中で、信頼してくださっていた商社の役員の方から言われた言葉があります。
「君も言いたくないのはわかっている。
ただ、こんな業界全体が苦しい時に、わざわざこんなことをするメーカーとは、付き合い方を考えたい」
この言葉が、一番苦しかったです。
その方は、私個人を責めていたわけではありません。
むしろ、私の立場も理解したうえで言ってくださっていました。
だからこそ、苦しかった。
これまで工務店様のためにやってきたこと。
信頼関係をつくるために積み重ねてきた時間。
一緒に集客を考え、イベントを企画し、勉強会の資料をつくり、地域で選ばれる工務店になるために取り組んできた日々。
そのすべてが、自分の意思とは関係のないところで崩れていくような感覚がありました。
もちろん、会社が悪いと言いたいわけではありません。
メーカーにはメーカーの事情があり、守らなければならないものもあります。
ただ、このままでは、自分が今まで大切にしてきたものまで失ってしまう。
そう感じて、いてもたってもいられなくなりました。
独立願望はなかった
実は、それまで私に独立願望はありませんでした。
いつか会社をつくりたい。
自分で事業をやりたい。
そう考えていたわけではありません。
それでも、その時はじめて「会社を辞めよう」と思いました。
そこからは早かったです。
自分がこれまでやってきたことを振り返った時、外に出てもできることはあると思いました。
むしろ、メーカー営業という立場ではできなかったことが、外に出ればできるかもしれない。
特定の商品やメーカーの都合に縛られず、工務店様にとって本当に必要な支援ができるかもしれない。
そう考えると、不安よりも期待の方が大きくなっていました。
正直、不安はほとんどありませんでした。
もし1年やってダメなら、どこかの住宅会社で営業をすればいい。
それくらいの気持ちでした。
そして半年後、私は会社を退職しました。
FORGEでやりたかったこと
FORGEを立ち上げた理由は、きれいな言葉で言えば「地域工務店の支援」です。
でも、もう少し本音で言えば、自分が信じてきた仕事を守りたかったのだと思います。
メーカー営業時代、私は営業の枠から少しはみ出しながら、工務店様の集客や発信、イベントづくり、勉強会の準備などに関わってきました。
それは本来、会社から求められていた仕事ではなかったかもしれません。
ただ、地域工務店様と関われば関わるほど、商品を売るだけでは解決できない課題があることを感じていました。
良い家づくりをしているのに、伝わっていない。
技術や想いがあるのに、選ばれる仕組みがない。
地域に必要とされる会社なのに、価格競争に巻き込まれてしまう。
そういう現実を、何度も見てきました。
地域の工務店には、まだまだ伝わっていない価値があります。
丁寧な家づくり。
お客様との近さ。
現場への責任感。
地域で長く暮らしを支える覚悟。
そうした価値を持っているにもかかわらず、発信が苦手だったり、集客の仕組みがなかったりすることで、本来選ばれるべき会社が選ばれていない。
一方で、広告費や見せ方の上手さだけで選ばれている会社もあります。
もちろん、発信力や広告戦略は重要です。
ただ、本当に良い家づくりをしている工務店が、伝え方を知らないだけで埋もれてしまうのは、あまりにももったいない。
私はそこを支援したいと思いました。
単にホームページを作る。
広告を出す。
SNSを運用する。
それだけではなく、その工務店が何を大切にしていて、誰に選ばれるべき会社なのかを整理し、言葉にし、形にして届ける。
そのためにFORGEを立ち上げました。
メーカー営業ではできなかった支援を
メーカー営業時代にも、工務店支援には本気で取り組んできました。
ただ、どうしても限界がありました。
メーカーの営業である以上、最終的には自社の商品を扱ってもらうことが前提になります。
支援の幅にも、立場にも、どうしても制約があります。
また、メーカーに所属している以上、どれだけ工務店様のためを思っていても、会社の方針や価格改定、営業戦略から完全に自由になることはできません。
コロナ禍で感じた苦しさは、まさにそこにありました。
自分自身は工務店様の力になりたい。
でも、所属している会社の立場としては、相手に負担をお願いしなければならない。
その矛盾に、自分の気持ちがついていかなくなったのだと思います。
FORGEなら、もっと自由に工務店様と向き合うことができます。
商品の都合ではなく、会社の未来から逆算して考えることができる。
短期的なキャンペーンではなく、長く選ばれ続けるためのブランドづくりができる。
売上だけでなく、その会社らしさや、お客様との関係性まで含めて支援できる。
それが、私がFORGEでやりたかったことです。
最後に
FORGEは、最初から大きなビジョンを掲げて始まった会社ではありません。
独立願望があったわけでもありません。
ただ、住宅業界が苦しい状況にある中で、自分がこれまで大切にしてきたものが崩れていくような感覚がありました。
そのまま何もしないことが、どうしてもできなかった。
だから、外に出ました。
地域工務店には、まだまだ磨けば光る価値があります。
でも、その価値は伝えなければ届きません。
FORGEは、その価値を見つけ、磨き、必要としている人へ届けるための会社です。
これが、私がFORGEを立ち上げた理由です。

